翡翠 - 天野月子
軋む音の奏でに耐え切れず
距離を作るわたしを許さないでいい
あなたのやり方でいい
膨れ上がる上辺だけの嘘で
誇り庇うあなたと分かっている
今はそのままで悪戯に生きて
何を葬り 手にして 残せる
わたしの腕がもう少しだけ長く
すべてを包めたなら
不安を焦りを痼りを取り去る
魔法を掛けてあげる事も出来た
遠くへ翔び発つ 新しく開いた扉へ
あなたは出ていく 眩い季節の中へ
揺るぎのないまっすぐな視線で
獲物を待つ鋭いあなたの姿を
わたしは目指して追いかけたけれど
枝に岐れた旅路の向こうで
沈んだ心 繕いながら笑う
あなたの痩せた頬に
戸惑い 眸を逸らして置いてく
諦めてしまったのは わたしだった
いくつの出会いを さよならで塗り替えるのだろう
小さく頷く わたしはただ無力で
遠くへ翔び発つ 新しく開いた扉へ
別れの痛みを 輝く宝石へと変えて
ふたりが重ねた日々を失くさないでいて
あなたが消えてく 眩い季節の中へ
軌跡を描くために