第十三巻 509ページ…
私は馬鹿だ…そう沈んでから気付いた…私は
唯…歌いたかった
唯…この歌を聴いて欲しかった
唯…それだけだった…
蒼い波の雫 照らす…月は冷たく
大きな岩場の陰(シェイド) 庭舞台(テラス)…夜は冷たく
聴いて…嫌や…聴かないで 空を呪う歌声
恨み唄…いや…憾み唄 海を渡る歌声
楽しければ笑い 悲しければ泣けば良いでしょう
けれど今の私には そんなことさえ赦されぬ
私はもう人間(ひと)ではない 歌うことしか出来ぬ
悍しい化け物へと変わり果てていた…
生きることは罪なのだろうか…望むことは罪なのだろうか…
歴史よ…アナタの腕に抱かれた 彼女達は言うだろう
「アナタの愛は要らない…私はそんなモノを愛とは呼ばない」と…
嵐を導く哀しい歌声は 白鴉の途を遮るかのように…